受託は麻薬なのか?スタートアップに問われる死なない方法とは

スタートアップを始める時に「自社サービスに集中しろ!」、「受託開発はするな!」という風潮が出回っており、成功した起業家の多くはこのように唱えることもあります。確かに、自社サービスと異なりまとまった売上を立てることができるので麻薬になりがちな受託開発ですが、果たして本当にスタートアップは受託をしてはいけないものなのでしょうか。

スタートアップは受託開発をしてはいけないのか?

Y Combinatorの元パートナーであるポールグレアムは、Ramen Profitableというエッセイの中で、スタートアップは死なないことが初期フェーズで最も大切なことであり、ラーメン代くらいは稼げるくらいにならなければならないと話しています。ただし、その条件はあくまで自社サービスで売上を出すことであり、受託開発やコンサルティングではいけないとしています。

受託開発をしてはいけない理由として挙げられているのが、大きく2点あります。まず、受託開発や営業から保守・運用までどのフェーズにおいても労力を費やしてしまうことになり、スピードが求められるスタートアップの世界では大きく足を引っ張られてしまうことになるのです。次に、スタートアップが上手くいかなかったときに「受託開発をしていたから、成功しなかった」と言い訳をしてしまう材料になってしまうことです。

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なによりも、普通にやっていてもなかなか売上を立てることができない自社サービスよりも、納品をすれば確実にお金が手に入る受託開発に手を出してしまうと麻薬のようにやめられなくなってしまうというのもあります。

受託以外に死なない方法には何があるのか?

一番の理想は、自社サービスで売上が立ち、これで生活していけるポールグレアムが話す「RamenProfitable」を達成するのがベストアンサーです。しかし、事業モデルやコンバージョンが難しかったりすることもあるので、なかなか思った通りにいかないというのが現実であったりもします。

そこで、受託開発以外でスタートアップが死なないためには外部からお金を入れるしかありません。銀行から借入ができればそれが良いかもしれませんが、信用のないスタートアップは資金調達に走るかもしれません。まったく、検証が取れていない状態で資金調達をしてしまうことはリスクであり、数百万円で10数%とエクイティを渡さなければならないこともあります。
その規模の額であれば受託開発で頑張れば、数ヶ月で稼ぐことができるお金です。スタートアップは株の問題に真摯に向き合う必要があります。

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個人的なストーリーを挟むと、CiaoTechnologiesもまた受託開発を避けて自社サービスのみに集中することを決意し、3ヶ月ほどピボットも繰り返しサービスの開発および仮説検証に集中しました。やがて、サービスは鳴かず飛ばずでお金だけが減っていく毎日でした。そうしていくうちに、チームは崩壊し、私は一人になりました。
このとき、残りのお金が乏しく、新しいアイデアを思い浮かび、それに賭けるだけの余裕そのものがなくなり、もう残りのお金すべてを民泊投資につぎこもうかなと本気で考えていたこともありました。ライフゲージが赤くなってくると、よからぬ意思決定をしがちになるのです。

スタートアップに「受託」の選択肢

スタートアップを始めた当初、受託開発をロクにしたことがないのにもかかわらず、スタートアップの麻薬だと決めつけ避けていました。果たして、その麻薬を手に入れるだけの力量がないまま、受託開発から逃げているスタートアップが幾つあるのでしょうか。

また、受託開発をおこなうことでのメリットも幾つかあるのです。

目的をもって取り組むことで、成長につながる

ただこなすだけの受託開発ではなく、自分よりもスキルの高いプレイヤーと一緒に仕事をしたり、実力以上のスキルを要するプロジェクトに関わることで個人、会社全体が成長するキッカケとなります。自分が何を学ぶか、きちんと目的意識を持ち受託開発に取り組むことで成長に繋げていくことができます。

業界への知見・コネクションが深まる

スタートアップのアイデアが受託案件によって特定の業界知識が高まり、これをプロダクトにしていくことも一つの方法です。特に、スタートアップはBtoCの身近なところから発想をしがちなので、BtoBのビジネスを考えてみる良いキッカケになると考えられます。

チームメンバーを創出できるかもしれない

創業してすぐのスタートアップが共同創業者を探すことは非常に難しいです。そして、イベントや知り合いの紹介で早急に決めてしまうことは非常に危険なことでもあります。もし、あなたが共同創業者候補を見つけることができたのであれば、一度一緒に受託案件を組んでみたりするようにしましょう。受託案件は期間が決まっているので、適正テストには最適です。

そもそも、スタートアップは何をしているかよりもマインドの問題でもあるので、諦め続けなければ成功するという意思を確固にしてやり続けるのであれば、必ず自社サービスの成功があるものだと信じています。